2020/11/04

2020年10月に観た映画。

『ウェンディ&ルーシー』★★
『フェイド TO ブラック』★★
『水の話』(トリュフォー/ゴダール)★
『ジェネシスとレディ・ジェイのバラード』スパイラルホール★★★
『オールド・ジョイ』スパイラルホール★
『好色花でんしゃ』
『泣く女』(西村昭五郎)★★
『TATSUMI マンガに革命を起こした男』★
『愛と平成の色男』
『のぞき』武田一成 ★
『フール・フォア・ラブ』★★
『夕暮れにベルが鳴る』
『あなたがすきです、だいすきです』★
『ターチ・トリップ』★★
『陸地にて』★
『カメラのための振付けの研究』
『変形された時間での儀礼』
『暴力についての瞑想』
『夜の深み』
『マウス・オブ・マッドネス』★★
『ブルー・カラー 怒りのはみだし労働者ども』★★
『バーディ』(アラン・パーカー)★
『スケバンマフィア 恥辱』★
『男の出発』★★★
『月の輝く夜に』★
『異母兄弟』★
『鏡の中のマヤ・デレン』
『リトル・オデッサ』★
『団鬼六「黒い鬼火」より 貴婦人縛り壷』★
『ルージュ』(那須博之)
『宇野鴻一郎の姉妹理容室』★
『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』★★
『タイム』(ギャレット・ブラッドリー)★
『インテリア』(ウディ・アレン)★★★
『安藤組外伝 人斬り舎弟』★
『変態』(北川徹)★★
『スター80』(ボブ・フォッシー)★★★
『肉体犯罪海岸 ピラニヤの群れ』★
『痴漢電車 弁天のお尻 (デメキング)』

39作品。いろいろ観ましたが、サシャ・バロン・コーエンの『続・ボラット』はインパクト強かったですね。アメリカ大統領選挙にぶつけるタイミングで公開して、トランプ的なるものを徹底的にハメて茶化していてホントすごい。コーエンが演じるカザフスタンのTVリポーターであるボラットは反ユダヤで超女性差別主義者で、コーエン自身がユダヤ系のイギリス人であるというのを差し引いても、アメリカだけじゃなく女性に対してもユダヤ人に対しても黒人に対してもカザフスタンに対しても、全方位に相当失礼なお笑いをやってるわけで、マジで肝が据わり過ぎ。当然「ヒドい!」って声は上がるわけですが、作ってる方は「そのつもりでやってます」ってことなんですよね。こういう映画を堂々公開してしまうアメリカという国がなんだかんだ心底羨ましいというか、日本における芸能と政治の関係性のしょうもなさにガックリきちゃいましたね。で、「テレビ終わってる!」ってなるのはわかるけど、「インターネットで真実を知った!」てのも大概ですねマジ。『続・ボラット』でも、フェイスブックのホロコースト否定論者のページを見て、それを信じ込んだ反ユダヤのボラットが「ホロコーストがウソだったなんて…」と落ち込むというすごく捻くれた面白いギャグがありましたが、実際にそういう陰謀論者がいるってのは笑えない。マスクしないQAnon信者のトランピストも出てきたし、「コロナ騒動はフェイク!」とか、日本人でもそういうタイプのアレな人が平気でいるじゃないですか。結局インターネットの情報って、右でも左でも陰謀論でも自分が信じたい思想だとか不安だとかを強化する方向に作用するばかりだから怖い。僕も10代のときにはネトウヨに落ちそうになったりしたものです。そして今も僕はインターネット見すぎ!


数日前にアメリカの歌手ANOHNIがYouTubeに曲をアップしていて、グロリア・ゲイナーという人の"I Will Survive"って曲のカバーで素晴らしいのですが、概要欄に公開の経緯が書いてありまして、これがFacebookへの批判とインターネット社会に対する問題提起でした。一部引用します。
We all know that Facebook, Google, Twitter, Amazon and others now seem to be destroying our lives, our minds, our jobs, our cultures, and our societies' ability to govern themselves. 

We as artists were the first ones to be led to the stall to begin feeding, and being drained by, companies including Apple and Facebook. 

And now as artists, we should be the first to leave. We must show that it is possible to live without Instagram, without Facebook, without Google and Amazon.We must endeavor to rebuild our lives and our communities, our private conversations, in ways that don't rely on manipulative infrastructures and interfaces provided by the world’s richest corporations.
いや、わかるけど、わかるけど…、もう引き返せないじゃん…と苦い顔をしながら、ジョン・カーペンターの最高傑作『エスケープ・フロム・LA』のラスト、地球全体をシャットダウンさせるスネーク・プリスキンを思い浮かべる私です。
カーペンターといえば先月観た『マウス・オブ・マッドネス』も最高でした。ある本がそれを読んだ人間のリアリティを侵食して、読者が増えるにつれて世界の現実自体が変容していく。そこで「本を読まない人はどうなんだ?」という問いに対して、主人公が「映画があるじゃないか」って答えるのが痺れます。そしてその本は映画化されるのだった…。カーペンターは後に『マスターズ・オブ・ホラー』というTVシリーズの中で、観たら気が狂う映画の話『世界の終り』を監督していてそれも最高。映画≒プロパガンダ!
で、ANOHNIまで話を戻して、そして変えますが、スロッビング・グリッスルの元メンバーで結成されたX-TGがNicoのアルバム『Desertshore』を丸ごとカバーしたアルバムに彼女が参加してまして(当時はAntony Hegarty)、Nicoがストーンズのブライアン・ジョーンズに捧げた"Janitor of Lunacy"という曲でこれもまた素晴らしいです。それはさておきスロッビング・グリッスルといえばジェネシス・P・オリッジが率いたバンドなのですが、そのX-TGにはジェネPは参加していなくて、そして僕は先月ジェネPのドキュメンタリー映画『ジェネシスとレディ・ジェイのバラード』をイメージフォーラム・フェスティバルのプログラムで観ましたという話がしたかった。内容については柳下毅一郎さんのテキスト『人を新しい人間にするのは、テクノロジーではなく愛の力なのかもしれない』を読んでいただきまして、僕にとっては今年観た中で一番美しい映画だったのでみんなも観てください。

"We Hate You"が約30年後に"I Love You, I Know"になるのだった。

そしてポール・ウェスターバーグは1984年に"they love each other so, androgynous"と歌っているのだった。
『Androgynous Mary』というデビューアルバムを8月に出したのはGirl Fridayというバンドです。イイ。

それから先月は実験ピンク作品『エクスタシーの涙 恥淫』で感銘を受けた大木裕之監督のゲイ映画『あなたがすきです、だいすきです』と『ターチ・トリップ』が観られたのもよかったですし、Amazon Primeで公開されているギャレット・ブラッドリー監督のモノクロなドキュメンタリー映画『Time』もオススメですし、風間舞子と小川亜佐美が全身納豆まみれでペニバンセックスするシーンが素晴らしい西村昭五郎の日活ロマンポルノ『泣く女』が傑作だったということもお知らせして本稿を終わります。ペニバンもイイ。