2020/12/05

2020年11月に観た映画。

38本。
『スターダスト・メモリー』★★
『赤死病の仮面』★
『戦後秘話 宝石略奪』
『東京=ソウル=バンコック 実録麻薬地帯』
『白昼の無頼漢』★
『誇り高き挑戦』★
『ジャコ萬と鉄』(深作欣二)★★
『北海の暴れ竜』
『解散式』
『博徒解散式』★
『日本暴力団 組長』★
『博徒外人部隊』★
『仁義なき戦い 代理戦争』★★
『仁義なき戦い 頂上作戦』★
『暴走パニック 大激突』★★
『0課の女 赤い手錠』★★
『男組』
『男組 少年刑務所』★
『仁義なき戦い 完結篇』★
『昼下がりの情事 裏窓』★★
『警察日記』★
『本日休診』
『ダブルボーダー』★
『コップランド』★★
『秘本 袖と袖』★
『真夜中の刑事 PYTHON357』★★★
『アルタード・ステーツ 未知への挑戦』★★
『25時』★
『LOGAN ローガン』★
『俺たちステップ・ブラザーズ -義兄弟-』★
『コールガール』(アラン・J・パクラ)★★
『ライオンズ・ラブ』★ (新文芸坐)
『犯された白衣』★
『人間模様』
『血は渇いている』★
『裸の十九才』
『胎児が密猟する時』★★
『恐山の女』★★

深作欣二監督作品が12本。ニュー東映で撮った『白昼の無頼漢』から70年代半ばまで、未見のものをかいつまんで。東映ヤクザ映画が好きと言いつつ、恥ずかしながら『仁義なき戦い』シリーズを全て観ていたわけではなかった。この金字塔は映画館で観るべきなのだと思いつつ、たまにあるシリーズ全作品上映に行くのはなかなか気が向かず(だって5本もあるんだもん)、外伝的な『広島死闘篇』と一作目は映画館で観て、それはそれは感激したものの、続きはいずれ映画館で…と先延ばしにしていた。が、暇だし、とにかく暇だし、決心して部屋で観た。『代理戦争』から登場するヘタレな加藤武がサイコーであった。ひとりの監督の作品を順に観るのはやっぱり面白かった。今回観たものは東映が任侠映画から実録路線へ向かう狭間の時期のものでもあったし、というか昭和(特に40年代)ってやっぱりクレイジーだよな。非ヤクザ映画の『暴走パニック 大激突』も面白かった。1976年の渡瀬恒彦はこれと『狂った野獣』というカーアクション映画2本に主演していてマジ熱。中島貞夫監督がYouTubeチャンネルを開設して『中島貞夫の映画素噺』というタイトルで昔話をしているのだが、そのvol.1は渡瀬恒彦についてだった。『狂った野獣』の恒彦話は何度聞いてもイイ。是非、中島貞夫YouTubeチャンネルをご覧ください。映画評論家・佐藤重臣の本に触発されて若松孝二や吉田喜重などもちょこちょこ観た。若松孝二(もしくは足立正生)の女性観は若干気色悪いが、『胎児が密猟する時』は傑作だと感じた。その本に短い映画評が載っていた五所平之助『恐山の女』は、悲劇の廓話から土着エクソシズムへ飛躍するラストに驚いた。徐霊を請け負う行者役の東野英治郎が雑で最高。外国映画では、アラン・コルノー『真夜中の刑事』が好みど真ん中。ケン・ラッセルの『アルタード・ステーツ』もキマってて楽しかった。先月唯一映画館で観たのは『ライオンズ・ラブ』。アニエス・ヴァルダがアメリカのカウンターカルチャーに目を輝かせているチャーミングな映画だった。本人役で出演するシャーリー・クラークはNYのインディペンデント映画監督で、去年国立映画アーカイブで彼女の『クール・ワールド』という作品を観て僕は感動したのだった。フレデリック・ワイズマン製作の元、ドキュメントタッチで描かれるハーレムの黒人街と悪ガキたち。終盤、息の詰まりそうな街を抜け出して束の間を過ごすコニーアイランドの景色が忘れ難い。劇伴はもちろんジャズ。また観たいな~。先月はそんなかんじ~。
色んな本が読みかけのまま放置してあるが、今月1日に発売になった岸本佐知子さんの新刊『死ぬまでに行きたい海』をちびちび読み始めた。季刊の文芸誌『MONKEY』に連載されているエッセイをまとめたもので、毎号買って読んでいたわけではないが、岸本さんの連載はいつも良かった。vol.11(特集:ともだちがいない!)に掲載された「丹波篠山」の中の一節が単行本の帯に書かれている。
この世に生きたすべての人の、言語化も記録もされない、本人すら忘れてしまっているような些細な記憶。そういうものが、その人の退場とともに失われてしまうということが、私には苦しくて仕方がない。どこかの誰かがさっき食べたフライドポテトが美味しかったことも、道端で見た花をきれいだと思ったことも、ぜんぶ宇宙のどこかに保存されていてほしい。
僕も同じようなことを考えたことがあるのを、このエッセイを読んで思い出したのだった。この回も印象的だったが、vol.15(特集:アメリカ短編小説の黄金時代)に掲載された「三崎」の回もよく覚えている。「飲み会って、家に帰る部分さえなければ最高なのにな」という友人の言葉をきっかけに始まった"酒合宿"なる行事の話。「ただひたすら楽しく、楽しすぎてなんだか悲しくなってくる。それで帰りの京急の中でまた飲む。」のだという。7年続いたという酒合宿の記憶が混然とパラレルに短いセンテンスで連なる終盤のパートは、なんだかものすごく切ない気持ちになる。
去年、酒合宿は開かれなかった。特に理由があるわけではなかった。なんとなくこのまま終わるのかもしれなかった。それともまた何事もなかったかのように復活するのかもしれなかった。酒でつながった私たちだから、どんなふうになってもいいし、ならなくてもいい。
この一節には、ライムスター宇多丸氏の「しょせんアルコールを介して成立した友情やら何やらなんてね、二日酔いのゲロと一緒に流れていってしまうものなんですよ!」という至言を思い出すが、それはそれで悪くはないということを僕は知っている。ここ数年の楽しい夜はだいたい酒と共にあったと記憶している。ゲロ吐いたことはない。酔いつぶれたこともない。楽しかったことはちゃんと覚えている。「悪いことしたな」ってことも覚えている。それ以外のほとんどは忘れている。二日酔いの下痢便で肛門がヒリヒリし出したときだけは酒のせいにする。というわけで読んでる本の話でした。そんなかんじ~。よいお年を。