2021/05/09

2021年4月に観た映画。

『くの一忍法 観音開き』(皆川隆之)
『しあわせの一番星』(山根成之)★
『河内のオッサンの唄 よう来たのワレ』(斎藤武市)★★
『サンクタス』(バーバラ・ハマー) イメフォ
『ナイトレイト・キス』(バーバラ・ハマー)★★ イメフォ
『兵隊やくざ 脱獄』(森一生)★
『マリリンとアインシュタイン』(ニコラス・ローグ)★★
『さらば愛しき女よ』(ディック・リチャーズ)★★
『男子ダブルス』(ジャン=フランソワ・ステヴナン)★ アンスティチュ・フランセ
『ブルージーンズ・ジャーニー』(ディック・リチャーズ)★★
『のけぞる女』(加藤彰)★★
『波影』(豊田四郎)★ ラピュタ阿佐ヶ谷
『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』(クリス・バトラー)
『トラベラー』(アッバス・キアロスタミ)★★
『友だちのうちはどこ?』(アッバス・キアロスタミ)★★
『赤い暴行』(曽根中生)(再鑑賞)★★★
『そして人生はつづく』(アッバス・キアロスタミ)★★

17作品でした。『河内のオッサンの唄 よう来たのワレ』と『兵隊やくざ 脱獄』は田中邦衛追悼の意味で。しかし印象深い邦衛は『仁義の墓場』でのゾンビみたいなシャブ中役であり、『アフリカの光』でのショーケンとのイチャイチャであり、『人斬り与太 狂犬三兄弟』での肉親に撲殺されるあんまりな死に様であり、『人間の條件』での落ちこぼれ二等兵役であり、『黒木太郎の愛と冒険』での勇姿である。ラピュタ阿佐ヶ谷の豊田四郎特集は結局ニュープリントの『波影』しか観られなかった。そういえば特集のラインナップにもあった豊田監督の『千曲川絶唱』にも邦衛はイイ役で出演していて、話自体はなんてことない泣かせの難病モノなのだが、終盤にある、列車のデッキに立つ星由里子とその列車と並走するトラックの運転席に座る北大路欣也との切り返しが異常に素晴らしくて強く強く心に残っている作品。騙されたと思ってあのシーンのためだけにでも観てほしいと思います(未DVD化)。撮影の岡崎宏三は『波影』でも抜群の仕事をしていた。こちらも話自体は別にどうということはない廓モノで、それでも結構イイモン観たなと思うわけなので、やっぱりストーリーなんて映画の一要素でしかないのだ。そういう意味で、いつかのラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショーで観て以来久々に観た曽根中生『赤い暴行』は、iPadの小さい画面で観ても最高の映画であった。売れないバンドマンたちがセックスしたりケンカしたりする、マジで大したことないし取り留めもない話なのだが。遺作の『ライク・サムワン・イン・ラブ』(すっごくヘンな映画!)しか観たことがなかったアッバス・キアロスタミの作品が配信されたので観てみる。『友だちのうちはどこ?』と『そして人生はつづく』のメタな関係性や素人の子供を起用する点など、清水宏『蜂の巣の子供たち』『その後の蜂の巣の子供たち』を連想する。先月は池袋の新文芸坐で清水宏特集が組まれたが、ラピュタ阿佐ヶ谷の子供映画特集で観逃がした"蜂の巣3部作"の第3作目『大佛さまと子供たち』はラインナップに入らなかった。早くオレに大仏を見せてくれ!ここで先日観た『白鳥の歌なんか聞えない』でヒロインの本田みちこが岡田裕介に出していた大仏クイズです。Q. 鎌倉の大仏はいつたったでしょうか A. まだたっていない 大仏は座っているから… 以上です。映画は17本しか観られなかったけど、通勤時間で読書が捗っているので先月以来読んだ本を。全部面白いです。

フィリップ・ロス『グッバイ、コロンバス』訳:中川五郎
徳南晴一郎『孤客』
チャールズ・ウィルフォード『コックファイター』訳:齋藤浩太
チャールズ・ウィルフォード『危険なやつら』訳:浜野アキオ
ジョン・ファンテ『犬と負け犬』訳:栗原俊英
ジョン・ファンテ『ロサンゼルスへの道』訳:栗原俊英
チャールズ・ウィルフォード『拾った女』訳:浜野アキオ
モンテ・ヘルマン『モンテ・ヘルマン語る 悪魔を憐れむ詩』監修:樋口泰人 訳:松井宏
ホレス・マッコイ『彼らは廃馬を撃つ』訳:常盤新平
イシュメル・リード『ループ・ガルー・キッドの晴一郎逆襲』訳:飯田隆昭
白坂依志夫『不眠の森を駆け抜けて』

ウィルフォード楽しい。『拾った女』はとにかくラスト数行で明らかにされるある仕掛けに面食らった。あれは映像では不可能である。読書って楽しいと素直に思えた。『怪談 人間時計』でおなじみのカルト漫画家・徳南晴一郎の自伝『孤客』は小人症であった著者の怨念を感じる一冊で、今生本棚に忍ばせておきたい。増村保造作品でその名を知らしめた脚本家・白坂依志夫の評論・エッセイ集『不眠の森を駆け抜けて』は、巻末の篠田正浩との対談も含めて映画の話も普通に大変面白く大変ためになるんだが、セックス絡みの昭和映画界ゴシップネタには本気で閉口させられる。増村版『暖流』の左幸子が余計キツくなった。作家の山内マリコがかつて旧作邦画ブログ"the world of maricofff"に書いていた『暖流』の感想(暖流(1957))は傑作なので是非読んでくれ。同ブログに書かれた吉村公三郎『婚期』の感想(婚期(1961))も個人的に印象深いのだが(「そう、これは胸を張って言えることですが、いい年して彼氏いないと、どんなお嬢さんでも意地悪になります。本当です!」そうなんだ!)、山内さんが最近のインタビューで「フェミニズムに目覚めたのは20代後半の頃。ヤバい! 結婚しなきゃ!という内圧と闘ううちに、結婚が女性差別の温床なのに気づいて、一気に覚醒していきました。」と語っているのと照らし合わせると、"覚醒"のきっかけは『婚期』の高峰三枝子だったのではないかと思えてなかなか味わい深い。まあ山内マリコの小説は読んだことないのだが。というわけで、買っただけで満足しちゃった未読本を消化できる日々の通勤時間が相変わらず楽しい。なので面白い本やためになる本があったらオレにも教えてくれよな。にしても、このブログには参加者が10人もいるのに去年の5月以降アタシとしをさんしか更新しないじゃないですか。いや別にいいんだけど、なんかウケるなと思って。参加者はたぶん随時募集していると思いますのでどなたか是非。それでは、今月発売される9枚組BOXセットが一部で話題の工藤冬里率いるマヘル・シャラル・ハシュ・バズの名曲"8mmの昼食風景 / Lunch Scene in 8mm Film"でさようなら。