2020/02/14

Dumb Type《pH》


見惚れる時間はゆったりと濃厚に感じる。引き伸ばされたネガのような一瞬。

ダンサー。なんて美しい生きものなの。必要最低限の布を纏い、ハイヒールで障害物を飛び越える。可憐なネグリジェがぐしゃぐしゃになっていくのもお構いなしでいて。本能の慟哭が突き刺すままに動いている。規則正しい。しかし平衡が正義とは限らない。その知性にしか宿らない。決して見せてはいけない。

白薔薇の祈り。呆気ない。そのピンヒールはどんなに蹴っても折れないのに。脚のほうが先に砕けるがゆえに。むしり取った蝶の翅で何を描くというの。

喋る楽器。生きものの気配の音。性別なんて本当なら必要なかった。うなる波音。貝殻の奥で。ビルの頂上で。円舞曲だって輪舞曲だって感情を吐露できれば痛みも同じ。

足枷、じゃらじゃらと重たい鎖。その無駄に高いプライドなんじゃないの。大して生きていないし、読んでもいない。
草花は朽ちて枯れる。本当に眼が見えなくなっていく。これからも。見たいものだけ選んで見ればいい。こういう台詞が通じない世間だし、家だから、くるしい。海に撒いてほしい。海、空、砂、星、待っていてくれる。もうすこしボリュームを下げて。歩く速度で。